火山災害
火山の噴火(ふんか)は、地下深くにあるどろどろにとけた岩石(マグマ)が、溶岩(ようがん)となって地表に流れ出たり、火山のガスや火山灰、噴石(ふんせき)などが飛び出したりする現象(げんしょう)です。このような、火山の活動に伴って起きるさまざまな災害を火山災害といいます。火山災害には以下のようなものがあります。
溶岩流(ようがんりゅう)による災害
地下にあるマグマは、地上に出てくると溶岩とよばれます。この溶岩が、火口から流れ出てくるのが溶岩流です。溶岩は、ねばりけが強くて水あめのようにねっとり流れるものと、ねばりけがあまりなくて水のようにさらさら流れるものがあります。これは、マグマにふくまれる二酸化ケイ素(にさんかけいそ)という成分が多いか少ないかによるもので、二酸化ケイ素が多いほど、溶岩はねばりけが強くなります。
溶岩流のスピードは、人が歩く速度より遅いことが多いため、人がまきこまれるようなことはほとんどありませんが、温度はひじょうに高いので(噴出直後は1000度くらい)、溶岩流が流れてくると、途中にある木や木造の家などはみんな燃えてしまいます。また、溶岩は冷えて固まると岩になるため、溶岩流が通ったあとは、田畑も道路も使えなくなります。
火砕流(かさいりゅう)による災害
火砕流とは、火口から出て間もない高温の火山灰や溶岩のかけら、ガスなどがまじったものが、ものすごい速さで斜面(しゃめん)を流れてくる現象です。時速は100キロメートルをこえることもあり、火砕流がおそってきたら車でもにげることができません。数百度にもなる高温とガスのため、まきこまれた人は即死(そくし)してしまいます。火砕流は、火山噴火に伴う現象の中でも、もっともおそろしいものです。
1991年(平成3年)には長崎県の雲仙普賢岳(うんぜんふげんだけ)の噴火で大火砕流が起き、43人の方がなくなりました。歴史上いちばん大きな被害を出した火砕流は、1902年に中央アメリカの西インド諸島、マルチニーク島のプレー火山で起きた火砕流です。火山のふもとの村が火砕流におそわれ、島民約3万人が、たった3分ほどのあいだになくなりました。
火山泥流(かざんでいりゅう)による災害
火口から出て間もない火山灰や溶岩のかけらなどが、地下水や、山の途中にある湖の水、川の水などとまじって、谷を流れ下ってくるのが火山泥流です。このような泥流は高温のことが多いので、熱泥流ともいいます。冬、山に雪が積もっているときに火山が噴火すると、雪がとけて大きな泥流が発生することがありますが、これを融雪(ゆうせつ)型火山泥流といいます。北海道の十勝岳では、1926年(大正15年)5月の噴火で融雪型火山泥流が発生し、ふもとに住む144人が亡くなりました。
このほか、火山灰が降り積もった地域に大量の雨が降ると、火山灰と水がまじりあって、一気に流れ下ってくることがあります。これも火山泥流といいます。土石流とよく似ていますが、土石流のように大きな石などはふくんでいません。また、土石流より規模(きぼ)も速度もはるかに大きいため、被害も大きいという特ちょうがあります(ただし、このような泥流のことも、土石流とよぶ場合もあります)。積もった火山灰による泥流は、火山の噴火が収まった後も、火山灰が残っていれば何年も続きます。
火山噴出物(かざんふんしゅつぶつ)による災害
火山噴出物とは、火山灰、噴石、火山ガスなどをいいます。火山灰が田畑に降り積もると、作物はかれたり、売り物にならなくなったりします。道路や線路に積もれば交通のさまたげになります。また、灰が積もったところに雨がふると、道路はぬかるみになります。火山灰が屋外のいろいろな機械類(たとえば道路の信号機など)の中に入りこんだために、機械が動かなくなることもあります。
噴石は、噴出した溶岩が空中で冷えて固まったものや、火口付近にある岩石がふき飛ばされたものです。火山の爆発(ばくはつ)によって、直径1メートルもある大きな噴石が、2キロメートル先まで飛ぶこともあります。噴石が家の屋根をつきやぶることもあります。
火山からは有毒なガスも出ています。2000年(平成12年)に始まった伊豆諸島(いずしょとう)の三宅島(みやけじま)の噴火では、火山から有害ないおうのガスがたくさん出たため、島民は4年半ものあいだ、島の外に避難しなければなりませんでした。現在も、火山の近くは立ち入り禁止区域になっています。