日本に土砂災害が多いわけ
日本は、世界でも有数の土砂災害の多い国です。土砂災害の発生件数は、年によってかなりばらつきがありますが、土石流・地すべり・がけくずれを合わせて平均すると、年に1000件くらいの土砂災害が発生しています(政府広報より)。
日本に土砂災害が多いのは、日本列島の地形や地質・気象などの自然条件に大きな原因があります。また日本は山地が多く(国土の約6割)平地がせまいため、山の斜面(しゃめん)や谷の出口など、土砂災害の起こりやすい場所にもたくさんの人が住んでいて、それも土砂災害で大きな被害が出る原因となっています。
雨が多い
土砂災害を引き起こす大きな原因の1つは雨です。日本は世界の国々の中でも特に雨が多い国です。日本の年間平均雨量は約1700ミリ、世界の平均は約970ミリですから、その多さがわかります。しかも日本の雨は、1年を通じて平均して降るのではなく、梅雨(つゆ)や台風、秋雨(あきさめ)などの季節に、まとまって大量に降るという特ちょうがあります。このため、土砂災害も、梅雨や台風、秋雨の季節に起きやすいのです。
なお、台風は大雨を降らせるだけでなく、風や高潮(台風の低気圧や強い風が原因で、海の表面が盛り上がり、それが岸に押し寄せること)の被害をもたらすこともあります。日本には平均して年に10個ほどの台風が上陸します。
雪が多い
日本は、国土の50パーセントが積雪地帯(雪が降って積もるところ)です。とくに本州や北海道の日本海側は、世界でも特に雪がたくさん積もる地域です。もちろん、世界中に雪がたくさん降る国は少なくありませんが、どの国も、雪が多いところには人はあまり住んでいません。日本では豪雪(ごうせつ)地帯(雪が特にたくさん積もる地域)にも大きい町があり、人がたくさん住んでいます。人口が多ければ、なだれや、雪どけ水が原因の土砂災害の被害を受ける人も多くなります。
山地が多く、もろい地質の山が多い
地図帳で、日本列島全体がのっているページを開いてみてください。山や丘陵(きゅうりょう=おか)は茶色や黄色、平地は黄緑色で表してありますが、黄緑色の部分はとても少ないことに気づくでしょう。日本列島は、面積の約70パーセントが山や丘陵です。それも高くてけわしい山が多いという特色があります。しかも日本の山の多くは、くずれやすい地質でできているため、川の水でけずられたり、雨や風でくずれたりしやすいのです。
川は急流が多い
山が高くてけわしいため、そこから流れてくる川はみな、こうばい(かたむき)のきつい急流です。よその国のおもな川と比べてみてください(グラフ)。日本の川は、川というより滝といったほうがいいくらいです。
川のかたむきがきつくなるほど水の流れは速くなり、流れが速いほど、川底や岸の土をけずる力も強くなります。山からけずりとられた土が下流に運ばれ、川底に積もると、洪水(こうずい)の原因になります。
地震(じしん)が多い
日本は地震がとても多い国です。地震が原因で、がけくずれや地すべりが起こります。また、くずれた土が川の水や雨水などとまじって土石流が起きたり、河道閉塞(かどうへいそく)といってくずれた土砂が川をせき止めて洪水や土石流を引き起こしたりします。
【日本はなぜ地震が多いのか】
・プレートの動きと地震
地震は、地球のプレートの活動によって起きると考えられています。プレートとは、地球の表面をおおう厚くてかたい岩の板です。プレートは1枚ではなく、大小十数枚のブロックに分かれていて、それぞれのプレートは、となりのプレートとぶつかったり、はなれたり、となりのプレートの下にもぐりこんだりという動きを続けています。日本列島は、4枚ものプレートが接する場所にあります。この4枚のプレートは、海側のプレートが、大陸側のプレートの下にもぐりこむ動きをしています。もぐりこむときの強い力で、大陸側のプレートにひずみ(形のゆがみ)ができます。このひずみが一定以上大きくなると、大陸側のプレートはたえきれなくなって、もとにもどろうと、はねかえります。そのはねかえるときのショックが、地震として地表に伝わってくるのです。
2011年(平成23年)の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)や、1923年(大正12年)の関東大地震(関東大震災)は、このようなはたらきで、プレートの境界(きょうかい=さかい目)で起きた地震です。4枚のプレートが接する日本では、これからも、こうした地震がくり返し起こると考えられます。
・断層と地震
陸側のプレートはいつも、強い力でおされているため、プレートのはしだけでなく中のほう(陸のプレートの内部)にも、たくさんのひずみがたまっています。そのひずみが原因で岩石がひびわれ、ひびわれにそって岩石がずれたりこわれたりすると、そのショックが地表に伝わって地震になります。1995年(平成7年)の兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)や2004年(平成16年)の新潟県中越地震は、このようにして起きた地震と考えられています。
ひびわれにそって岩石がずれてしまったものを断層といい、今も動く危険がある断層を「活断層」とよんでいますが、日本列島には、今わかっているだけでも2000くらいの活断層があるといわれています。
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地震が起きる場所
火山が多い
日本列島は火山列島で、全部で110もの活火山があります。活火山とは、過去1万年以内に噴火(ふんか)したことがある火山のことです。世界中の活火山はおよそ1500ほどと考えられますから、日本にはその約7パーセントがあることになります。この数字だけ見ると、あまり多くないように見えますが、日本の陸地の面積は、世界中の陸地の面積の0.1パーセントですから、活火山の密度はかなり高いことがわかります。
火山の噴火は、火砕流(かさいりゅう)や溶岩流(ようがんりゅう)、泥流(でいりゅう)などを発生させるだけでなく、噴火がおさまったあとも、降り積もった火山灰が原因で土石流が起きたりします。
そのほかにこんな原因も
日本列島は山が多く平地が少ないので、川の扇状地(せんじょうち)や、がけの下のせまい平地などにもたくさんの人が住んでいます。特に大都市の周りでは、山の斜面(しゃめん)を切り開いたり、谷だったところを土でうめたりして、住宅地にしているところがたくさんあります。こういうところは、大雨や地震などで土砂がくずれたり、土石流が起きたりする危険(きけん)が高く、いったん土砂災害が起きると、多くの人がまきこまれてしまいます。