表層崩壊(ひょうそうほうかい)と深層崩壊(しんそうほうかい)
山の斜面が、さまざまな原因でもろくなり、くずれ落ちることを斜面(しゃめん)崩壊といいます。斜面崩壊のうち、山の表面をおおっている土壌(どじょう=土)の部分だけがくずれ落ちることを表層崩壊、土壌の下の、岩盤(がんばん)の部分までいっしょにくずれ落ちることを深層崩壊といいます。
土石流・がけくずれ・地すべりなどは、斜面崩壊を「崩壊のしかた」で分けたときの分類(ぶんるい)ですが、表層崩壊・深層崩壊というのは斜面崩壊を「崩壊の深さ(規模)」で分けたときの分類です。
深層崩壊
ふつう、山の表土(表面の土壌の層)は厚さが0.5~2メートルていどだと考えられています。ですから深層崩壊は、それより深いところから斜面がくずれる現象(げんしょう)ということになります。深層崩壊は表層崩壊に比べて、くずれる土砂の量がはるかに多いので、その土砂によって起きる土石流や河道閉塞(かどうへいそく)などの規模も大きくなり、被害も拡大します。
深層崩壊を引き起こす原因の代表的なものは、大雨・雪どけ・地震です。岩盤のなかに小さな割れ目がたくさん入っているようなところに、大雨や雪どけで大量の水がしみこむと、水は割れ目にたまり、その圧力で岩盤がくずれると考えられています。またそういう場所に地震の強いゆれが加わると、岩盤がくずれ、深層崩壊が起きるわけです。
最近の研究によって、地質や地形などから、深層崩壊の起きやすい場所というのがわかってきました。2010年(平成22年)には国土交通省から、深層崩壊の危険が大きい場所を示した全国の地図も発表されています。
森林と斜面崩壊
森林は「緑のダム」といわれることがあります。森林があるところは、腐葉土(ふようど=落ち葉が分解されることによってできる養分の多い土)などが積もって土壌が厚くなっているため、雨水や雪どけ水をスポンジのようにたくさんたくわえることができるからです。森林に降った雨水はゆっくりと地面にしみこみ、地下水の通り道を通って、やがて川へと集まります。一方、森林がなくなると、地表はかわいてかたくなり、雨は勢いよく地表を流れるようになって、土砂災害や洪水が起こりやすくなります。このように、森林には土砂災害を少なくする効果があるため、木がなくなって地面がむき出しになった山には、木を植えて土砂災害を防ぐ工事も行われます(くわしくは「山腹工」を見てください)。
しかし、それでは森林がある山は決してくずれないかというと、そうではありません。木は地面に根を張るので、木の根が杭(くい)のように地面の動きをおさえ、くずれを防ぐ力はあります。しかし、根の深さは深いものでも1メートルくらいですから、表層崩壊を防ぐ力はあっても、もっと深いところからくずれる深層崩壊には、ほとんど効果がないのです。