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土砂災害防災のフィールド一般の方々に、土砂災害とその対策について理解していただくこと、またその理解を通じて防災意識を醸成・維持していただくことは、簡単なことではありません。私たちが砂防の広報に携わって30年以上、これまでに培った経験と知識を多面的に活かし、様々な活動の支援や資機材の提供を行います。
砂防フィールド
コミュニティ
スタッフの取材記録などを交えつつ、土砂災害を克服してきた各地の活動紹介や情報提供を行っております。
この場を通じて新しい発見や様々な交流が生まれることができれば幸いです。
平成29年九州北部豪雨災害からもうすぐ一年を迎えます。被災地では今もなお懸命な復旧工事が続いています。
4月11日の大分県中津市耶馬渓町でみられた土砂崩落のように、予期せぬ土砂災害も発生しています。
昨年の豪雨で被災を免れたところでも、地盤が緩んでいることがあります。今後も、少しの降雨や、あるいは地震でも山腹は崩壊しやすい状態です。
土砂災害防止広報センターが発行する砂防副読本を、土砂災害の防災に関する知識の向上と予防のため、県民の皆様に配布していただき役立てていただきたいと思います。
左から、阿部洋祐 大分県土木建築部長、広瀬勝貞 大分県知事、理事長 山本賢一郎、監事 花井幸二
4月に大分県中津市耶馬渓町で発生した土砂崩落をみて感じたことをつぶやいてみます。
真夜中に突然頭上から山が崩れ落ち、家が丸ごと押しつぶされた悲劇を我が身に置き換えたとき、逃げるすべがなかったことを容易に想像がつきました。
土砂災害防止広報センターでは、非常時の最終手段は垂直避難(山の反対側の2階以上の部屋に逃げる)を謳っています。このことは国や県も同じように言ってます。耶馬渓の災害ではこれが通用しない事態でした。
報道記事を見ると数日前から前兆現象もあったようですが、住民の方々はその前兆、異変に気づくものの早期避難に至っていなかったことも残念です。
特別警戒区域や警戒区域にお住いの方々は少なくとも、土砂災害に限らず山や川の異変(前兆現象)には強く反応してほしいと願います。
自負するようですが、土砂災害防止広報センターが発行する砂防副読本には、前兆現象や避難の手法もできるだけわかりやすくたくさん書かれています。
砂防副読本をなんとか多くの国民の目に触れるようにしたいと思っています。
国・県・市町村・各種団体も日々防災啓発活動をされていますが、住民の関心を高く維持することは困難なようです。
ニュースで見た災害を我が身に振り替えて想像していただければ、防災意識は向上し、いざとなった時の判断も早くなるはずです。
しかし、今回の耶馬渓のような災害のようにどうにもならないような現象が実際に起こってしまいました。
このような危険個所にお住まいの方はどうすればよいのでしょうか?
住居を移転するのが一番望ましいけれど、先祖代々親しんで長年住んでいる土地を離れることはしたくない。
資金面の問題もあり、簡単に引っ越しできない。
いつ起こるかわからない災害を想っているよりも、生活するための優先順位がある。
などなど課題は多いと思います。
2009年に砂防学会に発表された一つの論文を思い出しました。
「耐土砂災害サバイバルルームの開発(水山高久ら)」です。
以下に転載させていただきます。
この論文にあるように、自宅を耐久性のあるサバイバルルームに改造することが研究されていました。
前述したように住民の諸事情を考えたとき、有事に備えて、避難所となる施設や住居の改装や改築の時にサバイバルルームを増設、補強することは現実的であると感じました。
ただ、やはり資金面を自費で賄うことはとても大変です。
この先の中山間地の過疎・高齢・少子化は進む一方です。
住民はその土地に愛着を持って住んでいます。
地方自治体では、都市部や国内外からの移住者を歓迎して誘致活動も進められています。
地域が継続するためには「ヒト」が住むことが第一です。安心・安全の向上のためサバイバルルームのような開発を、公共事業でも後押ししてもらいたいと考えます。
2018年4月20日に赤木正雄展示館の総会に出席しました。
昨年度は300名弱の入館者があり、兵庫県豊岡市周辺の小中学生の社会学習に活用され、また赤木正雄博士の偉業、砂防事業の成り立ちに興味を持たれる一般の方が来館されたとのことでした。
同展示館は、平成25年9月5日に開館され約5年半が経過しました。少しずつ来館者が増えてきました。
連絡先 砂防の父 赤木正雄展示館(館長:赤木新太郎)
開館日 金・土曜日の午前10時~午後3時(入場無料、事前予約制)
住所 赤木正雄氏の生家 〒668-0843 兵庫県豊岡市引野972 (駐車場あり)
Tel&Fax 0796-34-6517
E-mail sabo-am-tenjikan@lilac.plala-mail.jp
展示 パネル展示、映像コーナー、ケース展示
所要時間 約1時間(展示物30分、ビデオ20分等)
平成29年九州北部豪雨災害(7月)から一年を迎える被災地では、今もなお懸命な復旧工事が続いています。
被災地域のほか災害を免れたところでも、豪雨により地盤が緩んでいることがあります。
今後も少しの降雨や、あるいは地震でも山腹は崩壊しやすい状態となっています。
土砂災害防止広報センターが発行する砂防副読本を、土砂災害の防災に関する知識の向上と予防のため、県民の皆様に配布していただき役立てていただきたいと思います。
福岡県庁ホームページに掲載「知事の動き」
http://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/20180413kizou.html
左から、野上嘉久 福岡県砂防課長、監事 花井幸二、小川洋 知事、理事長 山本賢一郎、平嶺孔貴 衆議院議員武田良太政策担当秘書
取材日 2018年3月12日
取材先 国土交通省水管理・国土保全局 砂防部長 栗原淳一氏
取材元 (NPO)土砂災害防止広報センター 山本賢一郎
Q1.「砂防」という言葉の社会的な浸透度について何か感じていることはありますか?
Q2.大規模な土砂災害が多く発生していますが、国の対策として一番の課題は何ですか?
Q3.十分な事業予算が確保されない現状では、災害に遭わないためにどうしたらよいと考えますか?
Q4.どのようにしたら避難行動につながっていくと思われますか?
Q5.将来にわたって激甚化していくであろう土砂災害に、砂防事業や土砂災害防止の広報をどのように進めていきますか?
Q1.「砂防」という言葉の社会的な浸透度について何か感じていることはありますか?
私が建設省に入ったのは昭和59年のことでした。最初に配属されたのは広島県砂防課で、危なっかしい公務員生活が始まりました。広島県では、砂防のことを「しゃぼう」と言うんじゃと、ある上司から教えられたことを覚えていますが、当時は一般の方と話をしても砂防は本当にマイナーでした。赤木正雄先生(砂防の父と呼ばれる)の「砂防一路」を読めと先輩から言われ、砂防の困難だった道のりが建設省に入ってから少し分かったという有様でした。
それから35年近く経とうとしています。
「砂防」は、社会の中で一般的な言葉となったような気がします。そう思っているだけかもしれませんけど。砂防堰堤と言ってほしいのですが、一般の方には「砂防ダム」や「土石流」の言葉の方が通じるようになってきました。国会議員の先生に説明する際にも、「えー、土石流というのはですねー、土砂と水が…」なんて説明をしなくても、「はい、とても大事ですよねー。ところで、砂防ダムをもっと早くつくるために…」という感じです。30年前を振り返れば異次元の感があります。
Q2.大規模な土砂災害が多く発生していますが、国の対策として一番の課題は何ですか?
昨年、九州北部で大災害が発生しました。テレビや新聞が流木災害の脅威を連日取り上げたことが大きな背景となり、補正予算の獲得につながりました。砂防部は、砂防堰堤に貯まった流木の写真を何度も資料に使い、砂防堰堤の効果をみて、認識いただいたと思います。まだまだ足りないとお叱りもありますが。
砂防関係予算は、この数年当初予算がほぼ前年並みで推移する一方、補正予算をいかに多く配分いただけるかで、予算が増額できるか左右される状況が続いています。熊本や九州北部などの大災害が続き、直轄砂防事業が新たに着手されていますので、全体が前年並みの予算ではどうやっても全国各地の事業費が確保できない、言わば窮地に追い込まれてしまいます。
Q3.十分な事業予算が確保されない現状では、災害に遭わないためにどうしたらよいと考えますか?
警戒避難が重要となりますが、実は災害が発生したときに、必ず現地で聞かれる言葉があります。
「まさかここで起きるとは思わなかった」という言葉です。
私はこれまでにこの言葉を何度も耳にしましたが、この言葉は土砂災害の特徴を見事に表していると思っています。平時は、身の回りで土砂災害の危険性を感じることはほとんどない、砂防堰堤が必要と思うきっかけがなく、なかなか自分の問題として受け入れられないのが土砂災害だと思います。
この理解が進まないと、避難行動になかなか結び付かないのではと思います。
Q4.どのようにしたら避難行動につながっていくと思われますか?
国、都道府県、市町村が連携して住民への広報を繰り返すほかに手段は無いと思っています。ただやみくもに「知らせる努力」と言ってもダメで、災害発生前から「避難しなくては」と意識してもらえる「きっかけ」作りにならないといけません。
昨年の九州北部豪雨災害では、あの日多くの方が避難行動をとっておられたことが分かってきました。現在、大学の先生、国土技術政策総合研究所(国土交通省)や砂防・地すべり技術センターに分析してもらっていますが、日ごろから地域で避難マップを作り、どこに逃げるかを確認し、いざというときに近所で声をかけることも確認していたそうです。どこがイエローゾーン(土砂災害警戒区域)かも分かっていたそうです。大きな意味での広報が進んでいた証と思っています。
災害の時には大きくクローズアップされる土砂災害ですが、「ここで起きるとは思わなかった」と言われる土砂災害でもあります。砂防関係予算の確保のため、まずは必要になるご理解、そして現地における砂防事業の必要性を認識してもらうため、そして何よりも頭の片隅に避難が必要な時が来るかもしれないと思ってもらうため、広報は極めて大事です。
「分かった、分かった。その話はもう何回も聞いているわー」と言われるくらい、幾度も広報していくことが必要と思っています。
Q5.将来にわたって激甚化していくであろう土砂災害に、砂防事業や土砂災害防止の広報をどのように進めていきますか?
我が国の中山間地では少子高齢化、過疎化が急速に進行しています。この事態は国家の危機であり、国土保全の観点からも大きな大きな問題になっています。上流の山が荒れれば当然下流の集落や都市域の危険につながります。このような状況下で被災する可能性のある地域では、若手の防災リーダーを養成していく必要があります。そのためには幼少期から防災教育をしなくてはなりません。地域の安心・安全を考えるときには地域のアイデンティティも育むことになります。
平成22年の土砂災害防止法改正では、「過疎化や高齢化等の進行により地域の防災力が低下していることに鑑み、学校教育における防災知識の普及や地域住民への各種情報の提供及び周知の徹底が図られるよう、地方公共団体と連携して取り組むこと。」と、国会で付帯決議がなされました。土砂災害防止広報をあらゆる手段を駆使して、なお一層の防災教育推進に取り組んでまいりたいと思います。
以上
2018年3月12日、国土交通省水管理・国土保全局の栗原淳一砂防部長に、当センター発行の新改訂版「土砂災害から命を守る 砂防副読本」500部を、
砂防部局の関係機関にも広く一般に対する啓発活用をしていただくべく進呈しました。