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土砂災害防災のフィールド一般の方々に、土砂災害とその対策について理解していただくこと、またその理解を通じて防災意識を醸成・維持していただくことは、簡単なことではありません。私たちが砂防の広報に携わって30年以上、これまでに培った経験と知識を多面的に活かし、様々な活動の支援や資機材の提供を行います。
砂防フィールド
コミュニティ
スタッフの取材記録などを交えつつ、土砂災害を克服してきた各地の活動紹介や情報提供を行っております。
この場を通じて新しい発見や様々な交流が生まれることができれば幸いです。
駒ヶ根高原(長野県)で観光モニターツアーが開催されました。
主催は、駒ヶ根高原砂防フィールドミュージアム 観光ワーキンググループ。
砂防広報センターは、フィールドミュージアム活動のお手伝いをしています。
◇天竜川の支流「太田切川」
長野県伊那谷にある駒ヶ根高原(駒ヶ根市と宮田村の境)を縦断する太田切川は、中央アルプスから際限なく供給される土砂によって土石流や洪水氾濫を引き起こしてきた「暴れ川」です。
国土交通省天竜川上流河川事務所によって砂防事業が推進されています。
(二つのアルプスに挟まれた伊那谷)
この駒ヶ根高原には、太古から幾度もくり返されてきた土石流の爪跡を各地で見ることができます。
いま人々が暮らす広大なゆるい坂(土地)も、土石流と河川の氾濫の繰り返しによって形成された「土石流扇状地」でもあります。
駒ヶ根市と宮田村、そして天竜川上流河川事務所では、これらの土砂災害と人々の歴史・文化などを地域資源として位置付けて、“駒ヶ根高原砂防フィールドミュージアム”として整備しています。 また、各地に点在する豊富な地域資源と防災を結びつける役を担うボランティアガイドの養成にも力を入れています。
◇ここから本題
駒ケ根高原砂防フィールドミュージアムも平成21年7月の開館から3年目を迎えます。 これからのフィールドミュージアムの運営にあたって主要なターゲットのひとつである「観光客」の来訪動機、そして当地の新しい商品(地域資源)の価値にどれくらい満足していただけたのかを把握し、これを今後に活かすための切り口を探ろうという運びになりました。 そこで、平成24年10月、紅葉の駒ケ根高原を目当てに訪れた、フリーの観光客にツアー参加を呼び掛ける“ゲリラ的なイベント”を開催しました。 実は、この日は、紅葉が見ごろを迎える駒ヶ根高原の最盛期。 ここに、観光客がモニターツアーに参加したくなる“仕掛け”を用意しました。
(当日の手配りチラシ)
●朝8:00
紅葉狩りのためのロープウェイはすで4時間待ちの長蛇の列です。
一方その頃、、、自治体職員、地元NPOとともにイベント準備を着々と。
配布資料セットアップ
●朝9:30
そして、受付開始。紅葉狩りをあきらめた観光客が受付に殺到しました!
◇いざ、ガイドツアーにご案内です。
「砂防情報センター」のジオラマ模型や降雨体験機「あめ太郎」で当地の地形の成り立ち、そして当地の暮らしも含めてをわかりやすく解説していきます。
◇土石流のパワーは、点在する巨石で体感。
本当に水の力で巨石が流れるのでしょうか。
ガイドさんの説明で、そのメカニズムを理解します。
◇最後に、砂防施設である太田切川床固工群。
床固工とは、川の底が削られるのを防ぐ砂防技術のひとつ。
観光目的の観光客は、川の底が固めてあることに驚き、熱心に「防災」を学習します。
◇アンケートに答えて、記念品をゲット!
地元特産ジュースやボールペンなどの記念品をプレゼント。
また、学習しに遊びに来て欲しいものです。
このツアーでは、短時間のうちに、約100名の観光客に参加いただきました。
“意外な形”で、地球活動のダイナミズムや土砂災害の認識を深めたといえるでしょう。
◇参加者の反応は貴重な財産。
イベント結果を活かし、様々なガイド手法やツールを開発します。
デジタルガイドシステムは、スマホやIpad向けのGPSと連動した地図アプリ。
ガイドさんがいない時でも、地域資源の解説を見ることができます。
駒ケ根高原砂防フィールドミュージアムの取り組みは進化をつづけます。
(デジタルガイドシステムの開発)
◇欠かせない、ガイドさんの存在。
一見、わかりにくい土砂災害の痕跡なども、ガイドさんの存在が加わることによって、ほかの様々な地域資源と関連づけることが可能になり、充分な観光資源となります。
ガイドさんとの交流は、参加者には、通常の観光に「深み」が加わり、良き思い出となるでしょう。
そして、何よりも、ガイドさんの知識向上は地域防災力の向上にも繋がっている。
この企画運営に携わる関係者だって知らずのうちに防災知識が身についている。 楽しみつつ、地域を盛り上げつつ、知識を習得する新しい地域学習(防災教育)のかたちとも言えます。
以上、T/K