学会⼀覧
警戒避難体制強化のための現地観測機器の有効性について
令和元年台風第19号は,現地観測システム「サキモリ」(雨量計・水位計)を試験設置した栃木県大田原市須賀川地区(押川流域)を含む関東地方,甲信・東北地方などに大雨をもたらした。幸い当地区では土砂災害や河川洪水氾濫等大きな災害にはならなかった。前年12月に実施した「サキモリ」活用に向けた防災学習会に引き続き,台風通過後の令和元年11月に2回目の学習会を開催したところ,地区の防災リーダー(組長3名,防災担当1名)が「サキモリ」を活用していたことが判明した。
そこで,台風19号時の活用実態を整理し,気象庁と「サキモリ」観測値の比較検証を踏まえ,観測値の見易さの観点から住民自らが自宅周辺の観測値を確認できる効果を明らかにしたのでこれを報告する。
水位等センサーシステムを活用した地区防災計画作成に向けた住民意識啓発手法
近年の豪雨災害では避難しないことが問題視されている。気象情報等は以前よりきめ細かに得ることはできるが、自分たちが住んでいる場所の降雨、河川の水位を知ることは円滑な避難のために重要と考える。そのためのセンサーシステム(以下「サキモリ」)を開発し、栃木県と大田原市に協力を得て試験的に設置した。設置した地区において、サキモリの有効的な活用を目指し、地区住民の実態と防災意識等を知るための防災学習会、アンケート調査を実施し、地区防災計画作成に向けた住民啓発を行った。
現地観測機器活用による警戒避難体制の強化について
雨量、水位、土壌水分を測定でき、特小無線で情報がスマホ等にリアルタイムに伝達できる現地観測機器および運用プログラムソフトの「サキモリ(先守)」を開発した。これを試験運用するための設置場所を探した結果、栃木県、同大田原市の協力を得て同市内須賀川地区に設置することができた。現地観測機器は昨年の平成30年7月豪雨でも避難しない実態から、避難を促す手段の一つと考え、地元住民に活用していただくことも目指している。
そのため設置の許可を得た須賀川地区の実態を知り、利用の前提となる防災知識の向上を図ることとした。そのために防災学習会および運用説明会を実施し、合わせて住民の防災意識を調査するアンケートを実施した。